この心臓が錆びるまで



 誕生日会、当日。

 今日、8月14日が私の誕生日だ。私が産まれたのは、午前10:30分。16歳になるまでは、まだ少し時間がある。

 昨日買い物に行った後、会場となるリビングを飾り付けした。朝早く起きて、午前中の仕事を休んでくれたお兄ちゃんと一緒にケーキも作った。


「翠、ちゃんと来てくれるかな」
「さあな」
「……そこは『来てくれるよ』って言うところでしょ」


 誕生日会が始まる10時まであと5分。

 もう随分前から、まだかまだかと翠の訪問を待っているのに、翠はまだ来ない。窓から外を覗いても、それらしき人影はない。

 お兄ちゃんはソファーで寛ぎ、雑誌を読んで暇を持て余している。対してじっとしてられない私が待っていられず玄関に足を向けたと同時、静かな室内にチャイムの音が響き渡った。


「来た!」


 私は急いで玄関に走る。勢いよく扉を押せば、すぐに見知った人物が顔を覗かせた。


「久しぶり、薺。元気だった?」


 頭一つ分上を見上げれば、見惚れるような綺麗な微笑。輝く翡翠の宝石に、弾けるような笑顔の私が映し出される。


「うん。翠に会いたくて仕方なかった!」


 ニイ、と悪戯に笑ってやれば、翠も満足そうな笑みを零した。