この心臓が錆びるまで



 両親が事故で死んだのは、私が9歳のときだった。

 当時高校3年生だったお兄ちゃんは、有名な国立大学に進学が決まっていたにもかかわらず、その大学には行かずに近くの会社へ就職した。

 その原因は、私にあった。

 大学に進学したらお兄ちゃんは忙しくなるため、当初私は親戚に引き取られる予定だった。けど、私が我が儘を言ったのだ。

 身体が弱かった私は小学校に行っておらず、友達がいなかった。そのため私は昔からお兄ちゃんにべったりで、親戚の方が私を引き取りに来たときも、私は大泣きして嫌がった。お兄ちゃんにしがみついて離れなかった。

 そんな私の我が儘のおかげでお兄ちゃんは進学を諦め、私を育てていくために就職したのだ。ただ、それからのお兄ちゃんは多忙をきわめた。

 会社は勿論、私の出来ない家事は全てこなし、私の病気の面倒も見てくれた。両親が死んでからは私の身体の調子もあまり良くなくて、入退院を何度も繰り返した。入退費や治療費だって、きっとばかにならなかっただろう。

 今思えば、お兄ちゃんには本当に申し訳ないことをしたと思う。