「ごめん、な」
薺の真っ白な頬に恐る恐る触れて、自分の行いを悔いる。すると薺は、小さな手をその俺の手に重ね指を絡めた。
「その顔、ブサイク」
「ブ……、」
ブサイクって。予想外の言葉に反応が遅れた。でも、言葉とは裏腹に薺の手からは痛い程に伝わってくる、温かい感情。薺だから、それを俺は素直に受け入れられる。
「翠は、笑ってる方がカッコイイよ」
俺を真っ直ぐ見つめる薺は、俺が屋上から眺めていたときから何も変わらないままだった。
「知ってる」
笑って皮肉を口にすれば、その唇に薺のものが押し当てられる。
「バカ、ここ公園」
「あ、そうだった!」
悪戯に笑って立ち上がる薺に、俺も顔を緩めながら腰を上げる。薬をまだ持っていたことを思い出し薺に渡すと、薺はその薬を暫く見つめていた。
「心臓病、なんだ」
ポツリ、と薺が呟く。漏れたその言葉は、俺の耳に時間をかけて馴染んでいった。



![オトコイ[詩集]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.795/img/book/genre13.png)