この心臓が錆びるまで



「ごめん、な」


 薺の真っ白な頬に恐る恐る触れて、自分の行いを悔いる。すると薺は、小さな手をその俺の手に重ね指を絡めた。


「その顔、ブサイク」
「ブ……、」


 ブサイクって。予想外の言葉に反応が遅れた。でも、言葉とは裏腹に薺の手からは痛い程に伝わってくる、温かい感情。薺だから、それを俺は素直に受け入れられる。


「翠は、笑ってる方がカッコイイよ」


 俺を真っ直ぐ見つめる薺は、俺が屋上から眺めていたときから何も変わらないままだった。


「知ってる」


 笑って皮肉を口にすれば、その唇に薺のものが押し当てられる。


「バカ、ここ公園」
「あ、そうだった!」


 悪戯に笑って立ち上がる薺に、俺も顔を緩めながら腰を上げる。薬をまだ持っていたことを思い出し薺に渡すと、薺はその薬を暫く見つめていた。


「心臓病、なんだ」


 ポツリ、と薺が呟く。漏れたその言葉は、俺の耳に時間をかけて馴染んでいった。