馬鹿みたいに震える手は、中々蓋を開けられない。指に力を入れてやっと開けたフタから乱暴に何錠かを振り出した俺は、苦しげに開く薺の唇に宛がった。
「ほら、薬っ」
「んッ…ん、はぁッ」
薺の喉が上下するのを確認して、俺は薺の背中を摩った。今だ浅い呼吸を繰り返しきつく目を閉じる薺。俺はひたら薺の背中を撫で続ける。
それしか、俺には出来なかった。
―――――――
どれだけの時間が経ったのだろう。俺の腕の中で静かに呼吸する薺は、身体の痙攣も治まり大分落ち着いたように思える。背中を摩る手を止めると、心臓を押さえていた薺の両手がゆっくりと俺の背中に回された。
「ごめん、心配した?」
耳に馴染む薺のいつもの声に安心して、今だ震えの止まらない腕で薺を引き寄せる。
「バカ、こっちが心臓止まるかと思った」
「うん。ごめんなさい。ちょっと調子に乗りすぎた」
くすくすと薺の笑い声が鼓膜を揺する。
「ありがとう、翠」
鳥のさえずりのような綺麗な音色に、強張っていた俺の身体の力も抜けていった。脱力した身体は薺にぐったりともたれ掛かる。
「……翠?」
「薺、もうブランコ禁止」
薺の肩越しに、寂しい無人のブランコを見つめながら、俺は呟いた。
―――やばいくらい、焦ったんだ。



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