この心臓が錆びるまで



 途端、ぐわりとブランコが揺れる。俺は思わず情けない声を上げて、それに薺が笑った。


「ちょ、薺っ…」
「怖がりー!」
「危ないだろ!」
「良い男が言い訳なんて、見苦しいなあ~」


 立ったまま大きく漕ぐ薺の力に比例して、ブランコの運動が激しくなる。

 俺の中に生まれた一抹の不安が、赤いランプを点灯させ音を発しているのに、気付かないフリをして薺のペースに呑み込まれていく。

 薺の長い髪が視界に揺れた。


「……薺?」
「───……」


 急に漕ぐ気配を見せなくなった薺を不思議に思い上を見上げる。逆光で見えない表情を目をこらしてうかがい、刹那、見開く。


「なず、な?」
「っ…ハァッ…ハア…」


 苦しそうに顔を歪める薺を瞳に映し出したと同時、俺の中の不安が弾けた。