嗚呼、ほら。
「誰よりも動いてる筈の、翠が」
俺の腰に回る薺の腕の力が強くなった。
「翠、なんで?」
必要ない筈の存在に、それでも自分の意思で近づいていったのは自分なのに。今俺は、矛盾にまみれ後悔してる。
何も言えない。だって、何を言えば良いか分からない。いらない感情ばかりで、必要な機能は何一つ備わってない。ほんと、嫌になる。
坂を下った先の踏み切りに引っ掛かり、カンカンと電車を知らせる音だけが響く。騒がしい音をガタンガタンと鳴らしながら電車が去った後、竿が上がっても進もうとしない俺を、薺は更にきつく抱きしめた。
「ごめんなさい」
消え入りそうなか細い声の後、薺は自転車から下り俺の正面へやって来た。その表情は、まさに薺のいう“悲しい笑顔”だった。
「深入りすんな、って怒られたばっかなのにね」
涙なんか出ないくせに、俺は泣きそうになった。



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