この心臓が錆びるまで



 手でこっち、と呼んであげれば薺は笑いながらやって来た。


「ファーストキスもまだだった翠に2ケツなんて出来るの?」
「それ馬鹿にしてんの?」
「心配してんの~」


 ニヤニヤニヤニヤ、薺は俺を完全に馬鹿にしているらしい。そんな薺を横目に、俺は自転車へとまたがった。


「乗んないなら置いてくけど?」
「嘘です乗りますスミマセン」


 結局は後ろにまたがる薺に、今度は俺が頬を緩める。だらしない顔を見られないようにしながら、俺は勢いよく地面を蹴った。


「うわっ!」


 バランスを崩したのか、薺が俺の腰に思いっきり抱きつく。薺の体温が、俺の体温を更にあげる。せっかく引き締めた顔がまた緩んだ。


「ベタベタすんだけど」
「うるさい」


 大丈夫、気付いてない。

 自転車を漕ぐと思ったよりも風が吹き、歩くよりは遥かに涼しかった。


「翠、全然汗かいてないね」


 後ろから聞こえたその言葉に、大きく喉が上下した。