この心臓が錆びるまで



 時刻は既に三時を回っているのに未だ太陽は高く、ヒリヒリと肌の焼けるような暑さが薺の家へ向かう俺たちを襲った。


「暑い」


 薺がテンションの下がりきった声で呟いた。


「夏だし」


 そんな正論求めてないし。とすぐに返される。まあ、確かに。


「でも明後日からは夏休みだろ」
「暑いのには変わりないじゃん」


 薺は自転車を引く俺よりもトボトボと歩き、先程から暑い暑いと唸っている。

 どうやら薺は暑いのが苦手らしい。いつもの可愛いらしい薺とは思えない程衰弱、いや、廃れている。


「自転車は?」
「今日は歩きたい気分だったんだもん」


 なんの言い訳にもならない言い訳を口にする薺は、一人勝手にご立腹だ。まあ、確かに暑いので、機嫌を損ねる理由もわかるのだが。

 俺達が今歩いている住宅街は緑が少なく、まさに灼熱地獄だった。緑に囲まれた裏庭に居た俺達には少々キツい。

 余りにも薺の歩くペースが遅いもんだから、俺は進める足を止めて薺に言った。


「2ケツする?」


 2ケツなんて肌がくっついて暑苦しいだけだが、薺に何かあっては俺が今ここにいる意味がない。