―……そんな記憶があったのだ。 「…あの時の黒猫だったなんて。分からなかった。」 当たり前だ。 同じ目線に居る黒猫は、昔の仔猫の時よりもシャッとした顔立ちで、人間ならばカッコいいという部類に入るであろう。 まぁ、人間ならばなどと考えるのはおかしいが…。 「あのハンカチを結んでくれたあと、俺はアンタに礼がしたくて家を探した。」 黒猫は道端に座り込むと、昔を懐かしむように話し始めた。