大人になれないファーストラバー



泣かせたら可哀想だと思うのに、傷つけて。
大事な存在だと思うのに、めんどくさくて。




自分でもよく分からないことが蕾に伝わるわけもなくて。もどかしい。


もし今原稿用紙に文章を書いていたら、グシャグシャグシャグシャーって丸めてゴミ箱に放っていると思う。
そんな気分なんだ。


こんな気持ち、グシャグシャにしてどこかに捨ててしまえたら。いっそ楽だろうに。






そんなことを考えていると。
蕾と目を合わせてからけっこう時間が経った気がした。


また蕾のために時間を裂いてることにイライラしてきた。

ちらっと見た時計は1分も進んでないのに。






「なんだよ」






穏やかな声は出そうと思っても出なかった。

だとしても、これを機に蕾が俺の様子を察知して、手を離してくれるならそれでもいい気がした。




一瞬だけ蕾の手の力がゆるんで。
自分の気持ちが伝わったのかと錯覚した。


けど。それはほんの一瞬だけで。
蕾は何か言いたそうに、無言で口を開けたり閉じたりしている。