追いかけてくる足音。
近づいて来なければいいと思い、速度をゆるめずに歩いた。
なんとなく、今は、そっとしておいて欲しかったから。
もし今蕾が追いついて来て、足止めされてうだうだした態度とったら。
大声を出してしまう。
泣き出すと知りながら、たぶんそれは止まらない。
でもって、泣かれたら、放っておけなくなる。
だから今は近寄らないでほしい。
気持ちが不安定で、傷つけることしか出来ないだろうから。
が、その願いは通じず。
蕾の手に学ランの袖を引っ張られ、足を止めざるを得なかった。
「何」
"やめろっ"と叫びそうになるのを抑えて。
静かにそう言って、150センチあるかないかの蕾を見下ろす。
こんなにちっこいのによく生きてられなって、時々不思議になる。
そんなふうに、蕾のことをどこか冷めた気持ちで見ることが、高校に入ってから多くなった。
