教室へ戻ると、蕾の姿がなかった。
預けておいたスポーツバッグともども消えている。
「蕾?」
そう呼びかけた声は、自分でも驚くくらい心細そうだった。
蕾は普段一人で行動することがあまり(ほとんど)ないから。
いきなりいなくなられると不安になる。
どこに行ったのか。
何をしているのか。
俺の知らないとこで泣いていたりしないだろうか。
すごく心配になる。
「…トイレ長かったね」
どこからともなく声がした。姿は相変わらず見えない。
ふっと胸のわだかまりがなくなると、教卓の下から蕾が這い出してきた。
まさか、そんなところから出現するとは思っていなくて目を見開く。
声には出さないものの、口は「えっ」という字を形どった。
蕾が教卓下から完全に出てきてから。
取りあえず、
「ちょっとタケちゃんと話しこんじゃって」
って、本当のことは話さないでおく。
