「病院に運ばれてくる子供はだいたいみんな泣いてるのに、蕾ちゃんは泣いてなくて。 それが不思議で、子供ながらに気になったんだ…」
それから、気付かれないように治療室までついて行き、蕾が診察している間もずっと見ていたと葉山は言った。
薬を吹き掛けられても泣かず、暴れもせず、子供が診察を受けてるとは思えないほど静かだったらしい。
ロビーに戻り、名前を呼ばれるのを待っている蕾に近寄って。
おもむろに聞いてみたと言う。
『なんで泣かないの?』と。
すると蕾はこう答えた。
『そばにいたサクのほうがびっくりしたと思うから』
『サクってだあれ?』
と聞き返すと、
『幼なじみの男の子…』
「…―って、蕾ちゃんは火傷した腕を擦りながら言ったんだ。今でも鮮明に覚えてる。」
そんなことがあったのか、と、俺は瞬きを数回して、髪の毛に隠れて表情の見えない葉山を見つめた。
