雨宮…いや、違うし。
ヒロ太…惜しいし。
つーかなんで"ヒロ"だけカタカナなんだよっ
紛らわしいっ
と、名簿と葛藤していると、
「まだ?」
と言う蕾の声。
あとちょっとで見つかりそうだから、あえて「まだ」は言わない。
そしたら5秒たったかたたないかのうちに再び、
「まーだ?」
とドアのほうから一声。
「…」
あとちょっとだから、またしても何も答えないでおく。
でもたぶんそろそろ痺れを切らす頃だろうから…
「ま」
「うるせーなっ お前はっ」
予想的中。
"雨音ヒロ"の名前を窓際の列の前から3番目に見つけたと同時に「ま」と聞こえて。
来るだろうなと思っていたから、蕾のそれを途中で遮った。
「ごめん。だって…」
反省してなさそうな平らな声で謝る蕾。
こっちも本気で怒ってるわけじゃないし。まあいいんだけど。
売り言葉に買い言葉みたいな感じで、「言い訳なんかいらねんだよっ」と言いつつ、眉間にシワを寄せた。
