今まで蕾といる世界が全部で。それ以外はないと思ってた。
けど、蕾以外の女の手を握ったことがなくて、蕾以外の女のにおいを嗅いだこともなかった。
それに。
蕾のことを好きだと言う男にも会った。
まるで今まで2人っきりの世界に閉じ籠ってたかのように、始めて外の世界に踏み出したような気がした。
もしかしたら、本当にあの言葉に縛られていたのか?
『お嫁に行けなくなっちゃったらこの子に面倒見させますから』
まさかそんな義務的な気持ちで、今までずっとそばにいたんじゃないよな?
そう自分に問うてみたが、答えは返ってこない。
今まで一人で孤独なわけではなかったのに、なんでこんなに不安なのだろう。
外の世界を知らないことがなんでこんなに寂しいのだろう。
ずっとずっと蕾が一緒だったじゃないか。
一人ぼっちではないのに、これ以上何を望む?
"蕾がいればいい"
そう口に出していた頃が異様に懐かしく、突き刺さるよな痛みが胸にはしった。
何が不満なのか分からず、叫びたい衝動にかられた。
が、堪えて、足を挫いたと言う女子に肩を貸し、なにくわぬ顔で教室まで並んで歩いた。
途中、香水のにおいに溺れそうになりながら、何度も蕾の手の感触を思い出していた。
