闇に浮かび上がるような金色の髪に、淡い月明かりでも目の下に影を作る長いまつ毛。




真冬なのに薄着で、ロンTしか着ていない。
体の線があらわになって、華奢さが目に見えて伝わってきた。




どこかで会ったことがあるようなそんな男に、取りあえず名前だけでも訊ねておこうと思った。





「名前は…?」



「傘、いる?」



「…名前」



「傘、いる?」



「…名前はって聞いてるんだけど」



「…ナマエ?」



「うん。なに?」



「レイン」



「レイン?」



「うん。アンブレラ・レイン。」






ちょっとの間考えてみて分かった。

"アンブレラ・レイン"を日本語にすると"傘・雨"だっていうこと。




よく出来た名前だ。
日本人にしか見えないのにカタカナっぽいし。






「ねぇ、傘、いる?」




さっきと同じ質問を口にしながら、月光を宿した猫のような目が上目使いに見つめてくる。





「もう、傘はいらないよ」




きっぱり言うと、レインは目を丸くする。大きい瞳がいっそう大きくなり、特大のビー玉に見えた。