「―…か…さ」
ちょうど今いる道の曲がり角の辺りに、動く何かの影があるように見える。
暗闇の中、どうやら人間のようなその影は、何かぼそぼそとしゃべっている。
「―…さ…」
街灯の白い光の下にいたのだと向こうがよく見えない。
口裂け女に自分の居場所を晒してるようにも思えて、スポットライトのように降り注ぐ光の中から暗がりへと移動した。
「―…さ…い…」
少し、また少しと、その影に近づく。
わざとゆっくり進もうとしなくても、今はのたのたとしか歩けないけど。
距離を詰めていくと、影の輪郭から見て道端に腰を下ろしているのが分かった。
そして棒のような何かを背中にしょいこんで、両手にも一本ずつその棒を持っている。
そろりそろりと半径3メートル内に踏み込むと、その影が独り言のようにしゃべっている内容が聞こえてきた。
「―…かさいる…?」
