空と山の境目から溢れる夕日が目に染みる。
それが見えているのも後少しだろうけど。
学校を出てからしばらく時間がたったが、校門からほんの数メートル先の道をまだのたのたと歩いていた。
月が主役の時間が近いことを悟りながら、さっき男子から逃げるように離れる時に全部の力を使い果たしてしまったようで、思うように足が動かない。
このまま日が暮れて、真っ暗になって、電柱に付いてる街灯がコンクリの道を冷たく照らして。
運悪く口裂け女にでも出くわしたらどうしよう…
口裂け女の発祥の地である地元を一人で歩く時、それだけが気がかりでしょうがない。
何せ、50メートルを6秒で走る咲之助でさえ、でかい釜を持ったあの女の足には勝てないという。
それほど口裂け女は足が早いのだ。
で。今の壊れかけのあたしなんかが出くわしたら、走り出す前に仕留められるに決まってる。
あの釜の餌食になるなんて、想像しただけで震えが起こる。
さっきから頭のなかで繰り広げているシミュレーションでは、もう5回ほど餌食になった。
そんなことにならないよう懸命に足を動かすも、いっこうに前に進めないでいるのだった。
