「ありがと」
短くお礼を言って、男子からふらふらしながら離れた。
支えをなくすと、すぐに地面に倒れ込んだ。
焦点が定まらない。視界がくにゃりと曲がりくねる。
「平気っ!?」
黒髪短髪の男子に軽々と抱き起こされた。
砂のにおいが鼻孔に届く。振り返ると、黒く焼けた頬が目の前にあった。
「体調悪い?」
男子の手が肩に触れた瞬間、ほんのわずかだが体がピクッと反応した。
それに気付いて、男子の手がすぐに引っ込む。
咲之助以外の男子をこんなに間近で見たのは初めてだった。
無意識にだったものの、助けてくれたのにちょっと失礼な反応をしてしまったかも。
「…立てる?」
また控え目な態度で、男子は目を逸らしたまま聞いてくる。
「立てる」
目を逸らされて気まずさに気づき、全身に広がる痛みにうめきそうになりながら無理矢理立ち上がった。
「ありがとう」
もう一度お礼を言って、今度は転ばないように、片方しか靴を履いてない足で地面を踏みしめた。
「あ…」
支えてくれようと男子は手を伸ばしたものの。
さっきあたしの反応にすっかり自信をなくしたようで、伸ばしたままの格好で固まって動かなくなった。
かける言葉も見つからず、あたしは何も言わずにそこを離れた。
