大人になれないファーストラバー



150センチ(ほんとのところあるかないか怪しいが)のあたしがどんなにすごんで見せても迫力がなくて。

掴みかかられた男子はあたしを見下ろして目をぱちくりさせた。





この男子、何回か咲之助と話してるところを見かけたことがある。

黒髪短髪で、細っこい咲之助とは全然違って肩のあたりががっしりしてる。





「…橋本の、幼なじみだよね?」





しばらく視線を交わらせ、火花を散らしていると(一方的に)、男子は目を逸らしながら頬をポリポリ掻くような仕草で控え目に言った。




質問してるくせに目を逸らす様子に違和感を覚えつつ、キシキシ軋む膝に力を入れて鼻先を突きつけるようにズイと迫った。





「サク、もう帰ったの?」




「幼なじみだよね?」には答えずに、こめかみの痛みを堪えるのに眉間にシワを寄せて問う。





「え、帰った、かな?」


「誰と」


「さ、佐伯マユナと」





あたしは目を見開いた。

男子の胸ぐらからするりと手を離して、ぬらりと校庭を見渡す。





いつも砂まみれになってボールを蹴るのに夢中になっている咲之助の姿が、今日はどこにもない。