でもやっぱり。
観月の言葉、なんだか腑に落ちない。
自分だけが知ってる咲之助咲。それだけじゃ物足りない。
昔みたいに咲之助の世界にはあたしだけが存在すればいいんだ。
お互い成長なんかせずに、新しい世界に踏み出すこともなく。
ずっと狭い世界で、二人ぼっちで生きていければいい。
でも、そうやって咲之助を狭い世界に繋ぎとめ続けることが自分にできるだろうか。
いつか飽きて、咲之助は外の世界に出てってしまう気がする。
だから。
おそらくそれは…
「…ねぇ、今なに考えてる?」
観月の落ち着いてる声にはっと我に返る。
「え」てマヌケな声を漏らしす。質問された内容をまったく聞き取れてなくて動揺した。
「なに考えてたの? すごい顔してたけど」
「…すごい顔?」
「うん、魂抜けてたよ」
「今は、もう大丈夫?」
「平気。魂、帰ってきたみたい。」
「よかった」
「で?」
「なにが?」
「なに考えてた?」
声のトーンを下げ、瞳の奥に鋭い光りを宿す観月。
たまに観月らしくない観月がこうやって顔を出す。
こんな時は怖くて逃げ出したくなるんだ。
