咲之助は最後に頼もしく笑うと、再び背を向けた。
「サクっ」
あたしは、歩き出した咲之助に、届かないのに手を伸ばして、上履きのままタイルの床に降りて後を追った。
「待って、待…っ」
タイルとタイルの間の溝に爪先がつっかかり、膝をしたたか打ち付けながら床に倒れ込む。
じんじんとした痛みと痺れが膝から足全体へ広がって行く。
一拍遅れて肘も痛み出したが、転んだ拍子に目を瞑ってその瞬間に咲之助がいなくなっていたらと思ったら、そんな痛さに構ってる暇はなかった。
鼓動に合わせて疼く肘で体重を支え、上半身を起こして咲之助を見上げた。
「大丈夫か」
転んだあたしに手を貸してくれる。それは昔からいつも咲之助で。
近づいて来た咲之助はあたしを見下ろすと。
「自分で立てよ」
差しのべられたのは手ではなく、怖くはないけど厳しい言葉だった。
またチクリと胸が痛む。
「もう、俺は、手貸してやれないから」
チクリ、チクリ。
また刺さる。
苦しくて、心臓が壊れそうだった。
どこかでまだ戻れる気がしてたんだ。
咲之助はまだあたしのこと…、そう思って自惚れていたんだ。
