「サクは、背、伸びたね」
それから少し痩せた。
疲れているようにも見えるし。
「ああ、うん。伸びかも。」
咲之助はこちらに歩いて来ると、あたしの靴箱の二つ上のからくたっとした運動靴を取り出す。
そして、溝に細かな砂が詰まっているタイルの床にそれを放った。
「帰るの?」
前よりも高い位置になった横顔を、名残惜しいような目で見つめる。
「うん」
短く答えて、咲之助は蝶々結びの輪がびっこに結ばれたその靴に爪先を突っ込み、踵を踏み潰したまま二、三歩歩いた。
「調子、悪いの?」
「別に」
「それじゃ分かんないよ」
「別に、大丈夫だよ。心配すんな」
そう言った咲之助の顔は、そばにいたあの頃よりもずっと優しかった。
むしろ、そんな顔は見たことがない。
いつだって咲之助はケンカ腰で、素直じゃなくて。
なのになんで今になってそんな顔をするの?
