大人になれないファーストラバー





自分で自分を追い込んで、そんな寂しい夢を毎日のように見ては涙を流がした。



観月が倒れて入院してから3週間あまりが経ち、季節は完全に秋から冬へと移ろいでいた。





寒い朝。一人でいつもの道を歩いている。

去年の冬、咲之助がボロボロになりながら追いかけてきてくれた坂に差し掛かる。




「さむい」



「大丈夫か?」




…なんて。
返事を返してくれる人はもういない。




記憶がなくなったら、と、毎日付けていた日記はもう2冊目が終わろうとしている。




それに、ここのところ記憶が危うくなってきていることを実感する。



阿宮に話しかけられた時、咄嗟に名前が思い出せなかった。




「観月くんどうしてるの?」
と、同じクラスの女子に聞かれた時も、"観月"と言う名前は分かるのに顔が浮かばなかった。




あまり家にいないお父さんが帰って来た時もそうだ。
「誰?」と言いそうになる寸前でお父さんだと言うことを思い出した。




どれもショックで、早退や欠席が多くなり、よく寝込むようになっていた。