「蕾」
その声に顔を上げると、ふいにいちごミルクのにおいがした。"アヤ"の時と同じにおいだった。
そして伸ばされた細くて長い腕にそのまま抱き締められ、
「俺は平気だよ、だから…だから蕾のそばにいさせて…」
優しい観月のぬくもりとともに、内緒話でもするみたいな小さな声が頭上から降ってきた。
刹那、背中に回されていた手の感触が離れ、観月の金髪が視界を泳ぐ。
そして。
どさ。
そんな音がして視線を足元に落とすと、観月が床に倒れていた。
何が起こったのか分からなくて。
床に寝転んだ観月の綺麗な寝顔を確認しただけで、思考はストップしてしまった。
