大人になれないファーストラバー



あれから、あたしが落ち着くまで観月は膝立ちのままずっと黙っててくれて。




こんなに目の前で泣いてしまっては、やっぱり訳を話したほうがいいと思った。






「…シンデレラはさ、なんであそこで逃げたのかな?」





踊り場に腰を下ろし、一段下の段に足を投げ出して座っていると、観月が沈黙を破った。





「それは…実は灰かぶりなのを知られたくなかったんだよ」





ずっと膝で立ってた観月の細い膝が赤くなってる。

ちょっと痛そうだなって思いながら鼻をすすって答えた。




「…そっか。うん、そりゃそうだよね」



「うん」



「じゃぁ、蕾はなんで上履きを脱いだの?」






観月は誘導尋問が得意そうな顔してるけど。やっぱりそうみたい。

あたしの泣いた訳を、自然な流れで聞き出そうとしてる。







陽が差さなくなった校舎の中でも、微かな光りを集めて淡く輝く瞳で見つめてくる観月。



長いまつ毛が数回上下したけれど、視線は外さず。
じっとあたしの答えを待ってる。






「…サクが、悪い女に引っかかったのかどうかを確かめるため」






そんな観月に観念して、あたしは少し湿ってる唇で言葉をつむいだ。