斜め後ろからの足音を聞きながら答えを待っていると、
「橋本、むちゃくちゃサッカーうまくってさ、ついにレギュラーになったんだよ。」
と、阿宮は始まって間もない会話を脱線させた。
「あ…すごい、ね。」
咲之助の話ってだけでも何て答えていいのか分からないのに、ズレた返事を返されたので歯切れ悪くそれだけ言った。
あたしは口べただから、これ以上どうに会話を繋げたらいいのか分からない。
再び沈黙が訪れることを予期して、窓の外の尚も赤い太陽に目を細めた。
「…でさ、」
ふいにまた聞こえたその声に、つきそうだったため息を思わず飲み込む。
終わると思っていた会話はどうやら阿宮のなかではまだ続いているらしい。
「それが羨ましくて、最近毎朝朝練してる。」
言葉自体はシンプルだが、それに込められた気持ちは大きい気がした。
