「名取っ もう一度聞くっ なぜここにおるっ」
そんな、相変わらず変な言葉使いのタケちゃんの大声に、いつでも逃げ出せる状態だった体が反応した。
そして身を翻し、足を一歩踏み出す。
瞬間、思いもよらないことに、上履きがズルッと脱げた。
バランスを崩した体は、そのまま受け身も取る間もなく硬い床に倒れ込む。
が、その寸前、誰かによって腕を引っ張り上げられた。
「平気?」
知ってる声に顔を上げれば、そこには黒髪短髪の日焼けの顔があった。
「阿宮」
腕を持たれて支えてもらい、ゆっくりと床に手をつきながらそう呟いた。
「名取だいじょぶかあっ」
脱げたあたしの上履きを持って、タケちゃんがすぐに走り寄ってきた。
「大丈夫です。」
逃げようとした後ろめたさからタケちゃんの顔は見ずにそう答えた。
「先生、すいません。名取がご迷惑おかけしました。」
阿宮は軽く頭を下げる。
なんだか今までのやり取りを知っているようだった。
