大人になれないファーストラバー



教室を出て、目的もなく取りあえず玄関を目指した。



冷たい廊下に自分の足音だけがひたひた聞こえる。
息を吐くと、それは一瞬白く輝いてすぐに消えていった。



指先がひどく冷たい。
冬がもうすぐそこまで来ているようだった。



腕をさすりながら、できるだけ陽のぬくもりを感じられる窓際に寄りそうようにして歩いた。





窓の外にはいつからか赤く染まった太陽が、まるで東の空で夕焼けが起きているように空全体を真っ赤に染めていた。






「きれーな朝焼けだわな」





ふいにそんな声が数メートル離れたところから聞こえてくる。
あまりの唐突さに思いきりビクついてしまった。





「タケ、ちゃん…」





人の気配を感じた方へゆっくりと首を回して、進級しても相も変わらず自分のクラスの担任であるその声の主の名を口にした。





「朝焼けっつうんはなぁ、見た目綺麗だけんど、今日一日天気悪くなるっつう前触れかなんかなんだぞ」





タケちゃんは腕組みをして、その右手には孫の手を握っていた。
意外にもつぶらな瞳に赤い太陽を映して、どうやらあたしに語りかけているようだった。