この世界に、決して傷つかない人がいるなら、その人に出会いたい。
心も体も強くて無敵で。
どんなことがあっても決して泣かない人。
そんな人がいたらいいのに。
脆い人はダメ。
いくら心強い言葉をくれたって、見えないところで泣かれたらこっちが悲しすぎる。
「…傷つけてごめんね」
静かになった観月に、眠りを妨げないように小さく言った。
そして貸してもらっていた学ランを観月に返して。
それを、泣いたことがみんなに見られないように観月の鼻を覆うぐらいまで被せた。
「フミがもううなされないように、さよならするね。」
窓から差し込む陽の光の量がだんだんと多くなってくる。
新しい朝がやって来た清々しさとは裏腹に、あたしはまた行き場を失って悲しみの波に襲われていた。
自分からみんなを突き放して置いて、そんなこと言ってたら世話ないけど。
咲之助も観月も、あたしのメモリーカード探しの犠牲者だ。
振り回してるのは分かってる。でもどうにもできないんだ。
あたしは観月に再び背を向け、適当に床に寝ている生徒たちを避けながら教室を後にした。
