『観月 フミ』は漢字で書くと、『観月 文』になるらしい。
それで女の子の時の名前を"アヤ"にしていたようだ。
「…アヤ」
小さくそう口にすると、なんだか寂しくなる。アヤとフミは同一人物であることは分かっているのに、突然アヤという存在が消えてしまったようで。
いつもは隣にいて見たことがなかった観月の背中。
呼吸に合わせて微かに肩が上下している。
しょっちゅう見ていた咲之助の背中と比べると、もともと女の子の格好をしていただけあって、観月のほうがやっぱり細い。
肩も、腕も、足も。
こんなに華奢な体に今まで頼っていたなんて知らなかった。
観月は強い。
勝手にそう思い込んでいたけど、無敵なわけじゃなくて、観月だって弱いところがあるんだって。今さら気が付いた。
それを意識してしまうと、観月のことも遠ざけてしまいたくなった。
