大人になれないファーストラバー




あたしの答えに観月は軽く笑った。



「え、なんで笑うの?」



頭上に疑問符をたくさん浮かべて眉をひそめると、観月はますますおもしろそうに笑った。




「"早く最後になればいいのにね"って、どう言う意味か分かってないでしょ?」



「どういうこと?」





何やら意地の悪そうな笑みを浮かべ、観月はさっき着た学ランをまた脱いだ。


雰囲気をかもし出すために明かりをいっさい付けていない教室は、頼れるのは月の光だけで。
日光では透けることのない素肌が妙になまめかしくワイシャツ越しに見えた。




観月はその脱いだ学ランをあたしの頭から被せて、足まですっぽりと全身を覆うように羽織らせてくれた。




「早くキスしたいねって、遠回しに言ったつもりだったんだけど、伝わんなかったみたい」





そう言って、微笑む観月。




「あ…」





そう言うことだったのかと、自分の愚かな解釈がふとよみがえる。





「…でも、今日けっこう順調だから、最後のシーンもきっとすぐ撮ることになるよ。たぶん。」




自分の鈍感さはずば抜けていることに最近気づいて、後付けすることをようやく学んだ。



いったいこの鈍感さ故に今までどれだけの人を傷つけてきたのか。
何も知らない頃の自分を少しだけ尊敬した。