「観月くんイイっ!! すごくイイっ」
他の男子生徒にはダメ出しばっかりするくせに、観月のことはひたすら褒める。
監督兼台本担当と言う地位を乱用して、とにかく観月が脱ぐシーンが多い。
いやらしくならないのは、きっと観月の爽やかな表情のおかげだ。
それがなかったらこの映画は上映禁止にされるに決まってる。
「じゃぁ観月くんの次のシーンいってみようっ」
あたしと観月の二人のシーンはあたしのミスが多すぎて、どうやら深川監督は飽きたようだ。
「もう少し練習して来て」と言われ、先送りになった。
「観月くんっ目線こっちっ」
カメラ担当の男子の背中を、どこから持ってきたのかハリセンで叩きながら深川は叫ぶ。
叫ぶと言っても観月相手だからキツイ口調ではない。
「―好きだよ」
観月が台詞をカメラ目線で言うと。
刹那、深川が後ろへよろめく。
わざとかっ
とツッコミたくなったが、言った後が厄介そうなので教室の隅で大人しくしていることにした。
