大人になれないファーストラバー



上履きをぶらぶらさせながら、観月はふわふわと優雅に階段を下りてきた。




あたしのところまでくると、いきなり膝まづく。

そして上目使いにあたしを見ると、




「お身足を」




と上品な声でそう言った。



シンデレラには昔から憧れていたけど、実際こんなふうに扱われると恥ずかしい。

相手は女なのに顔もまともに見れない。







「…観月」



「ん?」



「無理。出来ない。」



「なんで?」



「慣れてないもん」



「嘘つけー 咲之助くんにいつもされてるでしょ」



「そんなんじゃないよ」



「そうなの? あたしにはそう見えるんだけど」






客観視するとそう見えるんだろうか。

咲之助は乱暴だし、そんなに大事にされてる気はしないのだけど。



それに咲之助はさっき上履きを拾ってもくれなかった。







「…違うよ」




下を向いて小さく答えた。

「そっか」って軽い答えが返ってきて、それできっと観月は帰って行くんだろうなって。

そう思った。





でも。
ふいに観月の手が頬に触れてきて、うつ向いていた顔を上げさせられた。