大人になれないファーストラバー



太陽が山に隠れたのか、校舎内に差し込んでいた陽が途切れる。




校内はオレンジ色からセピア色へ。今ではセピア色よりも色褪せて、灰色に染まりつつあった。





数滴流した涙は乾いてきて、頬がひきつる。
とりあえずもう悲しくない。不安はあるけれど。








ひと泣きして、さっきまでのことを冷静に思い返してみると、ちょっと悲劇のヒロインぶってたなって思う。

今だからそう思えるんだけどね。






膝に手をついて立ち上がろうと力を入れた。

スカートのひだを直してると、階段を下りてくる誰かの足が見えた。







「おやおやお姫様、どうしたのこんなところで」






上履きから膝、膝から手というふうにだんだんと視線を上げて。その声の正体を突き止めた。







「観月」





ちょうど階段の半分、あたしの上履きがある段まで下りて来て、観月は立ち止まる。

揺れてた金髪の髪も一時停止した。






「だからあ、アヤって呼んでってばー」



「あ。ごめん観月」



「わざとやってんの?」



「ごめん」



「いいよー あんま気にしてないからっ」





観月はにこっと微笑むと、ひょいっと上履きを拾い上げた。