大人になれないファーストラバー




阿宮の嫌な予感は


…当たってしまった。




順番が巡ってきて、阿宮が応援席で見守っている中、スタートの合図で走り出す。

机に並べられた紙をテキトーに選んで二つ折りのそれを開くと…






「…"好きな人"…」





思わず口に出たそんな言葉。
おまけに右下に『By葉山』と書いてあった。





『葉山ぁーっ!!!!』





心の叫びは阿宮にだけ届いたらしく、ぱっと顔を上げると阿宮が同情するような眼差しを向けていた。



膝から力が抜けて崩れ落ちそうになるのを、机に手をついてかろうじて支え、なんとか堪える。




スタートは誰よりも早かったのだが、紙の内容に動揺して次々に追い抜かされていく。






「くそっ」





走り終わったらあいつ一発殴ってやるっ
そう思いながら舌打ちをして紙を握り締め、再び走り出そうとする。



が、刹那、隣を走り抜けて行った懐かしい香りに気を取られ、また立ち止まってしまった。





「蕾…っ!?」





なんと、蕾も借り物競争に参加していた。

スタート直前まであと一人足りないと体育祭実行委員が騒いでいたけれど。
まさかそれが蕾だったとは…