大人になれないファーストラバー



なんだったかな。
去年の借り物競争で、手にした紙に書いてあった内容は…。



確か『信頼できる友達』だったか?



それを見て真っ先に浮かんだのは。それはもちろん葉山なわけがなくて阿宮だった。




阿宮も今年同様、100メートル走に出ることになっていて。
次の種目に出る生徒の待機する場所でボケッと傍観していた阿宮を引っ張り、ゴールを目指して走った。




けれどゴール手前で、隣に割り込んできたヤツにぶつかり、借りてくる物がかかれた紙を落としてしまったのだ。



必死でそれを砂ごと掴み、なんとか1位でゴール。




『さあて、1年3組の橋本くんは何を借りてきたのかな?』



と、ゴールで待ち構えていた司会者役の生徒会役員がマイクを通して言った。




俺は、持っていた砂まみれの紙をなんのためらいもなくその司会役に渡した。





するととんでもないことが起きたのだ。







『1年3組の橋本くんが持っていた紙には、ズバリ、"好きな人"と書いてありまーすっ』




マイクを通したその声は、校庭の隅々にまで行き届く。





『…は?』




体育着はそんなにサイズの大きいものを買った覚えはないが、間の抜けた声とともに袖が肩からずり落ちた。