"俺は女の子じゃないよ"




観月の低い声が、何回も何回も頭のなかで響いてる。





今起こってることに考えが追い付かず、瞬きすらせずに目の前の綺麗な顔を見つめていた。



切れ長な目に長いまつ毛、鼻筋の通った高い鼻。

これのどこが"女の子じゃない"のか。そんなこと言われたって今すぐに「ああそうですか」なんて受け入れられるわけがなかった。









「…俺の名前、フミって言うんだ」






"アヤではなくてフミ"。

そう頭が理解するまでに数秒かかった。






「本当の名前は、観月フミ。」





顔を引き寄せられたままの大勢がそろそろ辛くなってきたからなのか、迷いのない瞳で観月がそう言った途端、息ができなくなって目の奥が熱くなった。


目玉が飛び出るんじゃないかってほど目の神経みたいなのが圧迫されてる感じで。
いっそのことこのまま泣き出してしまえたら楽だと思った。





「…っ」





何か伝えたいのに声にならない。
泣きたい。苦しい。って助けを求めたいのに、観月は男の子の顔であたしの反応を待っている。






"なんでこんなに苦しいの?"



顎に触れる観月の手を強く掴んで、心のなかでそう問うてみた。






"あたしは友達だと思っていたのに、観月はそうじゃなかった"



そんな事実に心臓を鷲掴みにされたようにうまく呼吸ができなかった。
けど、それでも観月の目を見つめ続けていた。