「…アヤはアヤだよね」



「アヤじゃない」



「分かんない…」





観月が観月じゃないって言うなら、今までずっとそばで支えててくれたのは誰?


"大切にしたい"


そう思った金髪がよく似合う女の子は、幻だったの?




嘘だ嘘だ嘘だ。
爽やかなあの笑顔も、夕日に照らされていた綺麗な横顔も、ちゃんと昨日まで女の子のものだった。





「…じゃぁ、アヤは女の子じゃないの?」




まさかそんなはずはないと、震える手を握り締めながら聞いた。

きっと、観月のことだから「女の子だよー騙されたー」とか言うに決まってる。




鼓動が激しく脈打って、その微かな振動も今は気になった。




観月は女の子。
観月は女の子。




願うように観月を見つめて答えを待った。



観月はあたしの視線を思い詰めたままの顔で受け止め、そして重い口を開いた。









「俺は女の子じゃないよ」






観月がそう言い終わった瞬間、"サー"という砂嵐状態のテレビのような音が頭の中に響き渡る。





「うそ…」



そう言った声は掠れて、ほとんど聞こえなかった。






ああ、今分かった。
咲之助と似たようなにおいがした意味が。




あれはきっと、
男の子のにおいだったんだ…