「…頑固な寝癖ですね」
観月があたしの頭を見て、さっきから数えて5度目のため息をついた。
前髪のはねはたまたまカバンの底に眠ってたピンで押さえ込めたものの、頭のてっぺんの発芽米みたいな寝癖がなんど寝かせても起き上がってくる。
観月もお手上げの強力な寝癖だった。
「いいよ、アヤ。 あたし気にしないし」
「気にしようよ」
もう一度、あたしの発芽米みたいな部分を観月は手で押さえる。
様子を見ながら恐る恐る手を離すと…
「あ、やった、蕾っ 直っ
……てない」
一瞬だけクセを押さえられたが、またすぐに発芽米状態に戻ったようで、観月はがくんと項垂れた。
「だからアヤ、あたし気にしてないから大丈夫だよ」
「蕾がよくてもあたしが気になるからっ」
なんだかヤケになってるようで、観月は「水道に行こうっ」と言い出した。
