焦る気持ちとは裏腹に、何も発せずに口を開けたり閉じたりしてる。
「あのさ、部活行かなきゃなんだけど」
ため息まじりの咲之助。
完全に呆れてるのがはっきり伝わってくる。
「…ったく」
咲之助は、学ランの袖をつかんでるあたしの手に触れると、それを離させようとする。
なんかそれがすごく嫌で、あたしは学ランを握る手に力をこめた。
「いい加減にしろって」
落ち着いてるけど、すごく低い声。咲之助は確実に怒り始めてる。
咲之助の離させようとする力も強くなり、あたしのほうも必死で抵抗する。
そのうち、ボタンを全部外してあった学ランは咲之助の肩からずり落ちてきた。
「離せってっつってんだろっ」
怒鳴るような大声とともに、あたしの手は学ランから離された。
「ワケ分かんね」
捨てるように言うと、咲之助はあたしを置いてまた歩き出した。
「サク…っ サクっ」
呼んでみても反応のない咲之助。
いつからだろう。振り返らない背中を、虚しい気持ちで見ることが多くなったのは。
