「…平気、じゃない」
お姫様抱っこされても嬉しくなくて。ますますむっとして、近くにある観月の顔を睨んだ。
「ごめんごめん」
笑ってる観月。
なんだか調子が狂う。
「さっき、あたしのこと分からないって言ったよね」
不機嫌さをアピールしたままコクコクと頷いて見せた。
「あれね、蕾を困らせたかったんだよ」
悪びれるもなくニッコリ笑った観月。逆に腹黒く見える。
「アヤってやっぱり分かんないね」
すっかり毒気を抜かれて、またいつも通り平坦な声でそう言った。
そしたら観月は「あは、やっぱり」って苦笑。
「ねぇ、明日もデートしてくれる?」
観月の髪の毛の先からこぼれた滴が頬に落ちてくる。
するとそれは魔法の水みたいに、さっきまでの不安やもやもやが一気に消えていった。
「いいよ。アヤとなら」
返事をしたら観月はおでこをくっ付けてきて。
「やったね」ってすごく嬉しそうにそう言った。
