「ごめんっ」
謝りながら手を差し出すと、「お返しっ」と観月が言うのと同時に水中へ引きずり込まれた。
咄嗟に目を瞑ったものの、水の中で観月の手のありかが分からなくなって不安になり、ふいに薄目を開ける。
いつもより狭い視界の中。
大小様々な無数の泡が上を目指してあがっていく。
屈折して差し込むだいだい色の光と。水面の光の網の影がプールの青い底に映って、ゆらゆらと揺れていた。
その光景から目が離せなくなっていると、そろそろ苦しくなってきて、口から泡が次々に溢れ出す。
両手でそれを押さえながら、泡を追いかけて水上を目指すものの。足がうまく動かない。
だんだんどちらが上なのか分からなくなってきて、バタバタともがいた。
ふいに下から強い力にすくい上げられ、ぐんぐん水面が近づいていく。
「は…っ」
限界ギリギリのところでようやく水面から顔を出せて、大きく息を吸い込んだ。
「平気?」
何回か深呼吸を繰り返してから、その声に観月の腕の中にいることに気付いた。
