大人になれないファーストラバー




ママレードのようなオレンジ色の太陽があたしたちを照らす。



だんだん伸びて長くなる二つの影に会話はない。ただ手だけがあたしたちを繋いでいた。




そうやっているうちに学校に着いて、入るのに校門は使わず、手前にある道とは言えないぐらいの細い抜け道を通ってテニスコートを横切った。



するとすぐに背の高い夏草に囲まれてひっそりと佇むプールが見えてくる。



入口にあるシャッターには運よく鍵はかかっておらず、難なく中へ入れた。





プールサイドへ出ると、今日も一日いろんなものを焼き付くしきったような夏の風が吹き抜けた。

繋いだ手と手の隙間にそれが入り込むと、手のひらにかいていた汗が一瞬で冷やされた。





「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」





長い沈黙にピリオドを打って観月が口を開く。

風に揺れた金色の襟足が夕日に照らされてキラキラと輝いている。
そのきらめきは手を伸ばせばすぐに届くのに、吸い込まれそうなほど綺麗ですごく遠いものに思えた。





「…うん、いいよ。」





一息ついてから答えると同時に観月はあたしの手を離した。


汗ばんだ手のひらが寒くて、戻らないぬくもりが名残惜しく感じた。