大人になれないファーストラバー



なんで笑ってるの?


時々そう聞きたくなるんだ。


あたしの周りの人はいつもそう。何かを我慢しながら笑ってる。



だから、咲之助みたいに突然感情をぶつけられるとどうしたらいいのか分からない。




あたしは、普段から我慢してることや悲しいこと、少しだけでもいいから分かり合いたいのに。


なんでみんなそうやって一人で抱え込むのだろう。




あたしが頼りないから、笑ってることしか出来ないの…?






負の感情が渦巻いて、周りの景色が見えなかった。

うつ向き、心ここにあらずな空っぽな体を引きずるように、だけど引っ張ってくれる観月の手だけは強く握りしめて、学校への道を再び歩いていた。




ふと日陰から出ると、陽の光が目に入ってくる。
また日陰に至って、また出て。今度は少し面積の広い日陰に入る。



次に日向に出た時には、太陽が優しくなったように感じた。
目が痛むぐらいの眩しさも勢いもなく、ただ包むような優しい光。





学校を出たのは確かお昼過ぎ。
それからアイスを買って、駅前に移動して人違いして逃げ出して。

そしてまた学校に向かってる。




気付けば、そろそろ日が傾き始めてもいい時間だった。