「…うん」
プリクラは?なんて今そんなことを聞ける立場ではない気がして、あたしはそれ切り口を閉ざす。
観月の握りしめた拳にもう一度目をやると、5本細い指はもうグーを形どってはいなかった。
「暑いもんねっ プール行こうプールっ」
「うん、行こう」
観月の笑顔はとても作り物には見えないのだけど、逆にそれが不自然で。
握りしめていた拳のほうに観月の本当の気持ちが込められてるように思えた。
「学校のプール忍び込んじゃう? もう水泳部終わっただろうし」
観月は何かを堪えているように見えて。会話の内容に集中できない。
「うん」
「よしっ じゃぁ早速行こっ」
観月はさっきまでの乱暴な雰囲気とは打って変わって、今度はやらかくあたしの手を握る。
なんでいつもあたしは観月の後ろにばっか張り付いてるのだろう。
導いてもらうばかりで頼られない自分。
前を歩く背中を見つめながら、行き場のない寂しみで胸がいっぱいになった。
