いちごミルクみたいな甘いにおいに一瞬にして包まれる。
観月に抱きしめられたのは、これで何回目かな。
観月の息づかいが頭のすぐ上で聞こえてきて。
それと一緒に、
「…に連れてかれたかと思った…」
と言う囁きが耳に届いた。
連れてかれた?
"誰に"なのかがいまいち聞こえなくて。
なぜか必死であたしに抱きついている観月を抱きしめ返しながら「どうしたの?」と聞いてみる。
観月はまだ息が荒くて、一瞬間が開く。
あたしは観月の背中をさすりながら、返事を待った。
すると。
抱きしめる力がさらに強くなって。
「蕾が咲之助くんに連れてかれちゃいそうで、怖いよ…」
初めて聞いた観月の弱々しい声。
それは、掠れていてとても頼りないのに、なんだか男の子みたいで心臓が一回だけ大きく跳ねた。
「…アヤ」
同じ学校の女の子の制服を着てるあたしたちがこんなに強く抱き合ってたら、変に見えるのかもしれない。
けど今は、そんなの気にならない。
いつも支えてくれる観月。
何でかはよく分からないけど、今日はそんな観月が小さく見えた。
