「…ガチャガチャ?」
ふと、小さい頃に一度だけやったことのあるその名前を口にする。
「うん、ガチャガチャ。 ガチャガチャは運が悪いとダメだね。」
少し大人びた口調で男の子は言った。
それから、指輪を指でつまんだままだったあたしをじっと見つめ。
「かして」
と手を出してきた。
"これ?"と言う目で男の子を見ながら指輪を少し上にあげると。
男の子はコクンと頷いたので、あたしは指輪を手渡した。
「手、出して」
「なんで?」って言うと、男の子はあたしが手を出すのを待たずに。
あたしの右の人差し指を掴むと、ぐっと引っ張った。
「おねえちゃん、おれが大きくなったら結婚してくれ」
薬指じゃなくて人差し指に指輪をはめながら、そんなことを男の子は言う。
「え」
って、一瞬ひるむと。
男の子は「うそに決まってるだろー」と笑った。
「それにおれ、おねえちゃんの同じ歳くらいになるまで生きてないと思うしっ」
明るい声でそう言うけれど、男の子の笑顔はどことなく寂しかった。
