気付いた時には階段を上がりきっていて、最上階の駐車場への出入口にまで来ていた。




ふと、観月に似ていた女の子の制服が全然違っていたことに今気が付いた。
そしてますます後悔する。


なんであそこで声をかけたのか。よく見れば観月じゃないことぐらい分かっただろうに。




それに、ビビりすぎだ。
何もここまで逃げて来る必要なかったのに。


きっと観月はまだトイレ付近で待っているだろう。

…戻らないと。





と。上がってきた階段を降りようとすると、小さい男の子が一人で駆け上がって来るのが見えた。



そしてその男の子と目が合うと。



「おねーちゃーんっ これあげるーっ」




と、男の子は何かを持ったほうの手を掲げながらあたしに言った。


一応後ろを振り返ってあたし以外の人間がいないことを確認する。

さっきの人違いのこともあり、今度は少し慎重になった。






階段を上がりきってあたしの目の前まで来ると、男の子は肩で息をしながらその握りしめていた物体を差し出してきた。