「あたしはアイスじゃなくて蕾のほうが好き」
と、ふざけて言ってるのかどうか分からないような口調で観月は答える。
…なんだかさっきのは聞き間違いではないようだ。
ふと、観月が家に泊まりに来た時のことを思い出した。
"白頭巾ちゃん"
確かそう呼ばれた気がする。
もしかしたらそれの延長で。赤頭巾の物語に置き変えるのだとすれば、きっと観月はオオカミ役なんだ。きっとそうだ。
「お、オオカミさん、あたしは食べてもおいしくないですよ。」
って言ったら観月の歩みがぴたりと止まった。
そしてあたしを振り返ると。
「え、」
と、口を開いて珍しくぽかんとした顔の観月。
なんだかやっぱりあたしの解釈はおかしかったようだ。
「…なんか、違ったみたい。変なこと言ってごめん。」
言って、目を合わせているのが恥ずかしくなって逸らした。
いつもなら、はがゆい沈黙が訪れると観月は何かしゃべってくれるのに。
今は何も言ってくれない。
